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魚心あれば水心

2018年1月4日
 例外もあるかもしれないが、九州では本県だけ。それも主として大淀川河口域に生息とあっては、県民名誉賞でも贈りたいところだが人間ではない。大変希少な魚アカメだ。

 スズキ科に近い大型で文字通り目が赤い。宮崎市の大淀川学習館は長年飼育、観察しているだけあって、たぶん図鑑にも載っていない珍しい生態を学芸員が情報誌「まなぶんかに記している。のんびり泳いでいるが、なんと水槽の向こうから人を見分けるのだ!。

 「客や職員をじっと観察し、元気がなさそうな人に寄り添うような行動が見られる」。こちらが機嫌よく水槽をのぞくと、アカメも機嫌良さそうに見詰め返してくる。「まるで心を映す鏡みたいだ」とあって、人間の友達に思えてくる。

 まさに「魚心あれば水心」のお手本だ。というのもこの言葉、最近はふさわしくない場面で使われるケースが多いからだ。特に頻出するのが時代劇で賄賂を贈る場面。「これで一つ、例の件はよしなに」と商人。悪代官「魚心あれば水心だなおぬしも悪よのう」。

 よこしまなたくらみは通じ合うというイメージが定着して、「好意を示せば、相手も好意を示す」本来の良い関係で使いにくくなった。イメージの悪化は昨年の流行語大賞「忖度も同様だ。元は「他人の心を推し量って配慮する」こと。

 日本人らしい美徳だが、今や役人が上の者にこびる文脈で使う方が目立つ。権謀術数が飛び交う政界だが、政治家の誠意が伝われば有権者も政治参加の熱意で答える。今年は美徳を取り戻す年にしよう。悪意はアカメに見透かされるから。

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