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ヨルダン川は凍っているか

2017年12月7日
 昨日の朝は宮崎市で氷点下になるなど、県内はこの冬一番の冷え込みだった。白くなる息を見て、思い出したのが高村光太郎の詩集「智恵子抄」にある「冬の朝のめざめ」だ。

 冒頭に「冬の朝なれば ヨルダンの川も薄く氷(こお)りたる可(べ)し」とある。ヨルダン川は中東シリアのゴラン高原から南に流れ、死海へ注ぐ川。ヨルダンとイスラエル・パレスチナ自治区との国境になっており、沿岸部も含めて度々、聖書の主要な舞台として登場する。

 下流に近いエルサレムもその一つ。地図を見て驚いた。宮崎市と同じ北緯31度。遠い異文化の町ではあるが、毎日同じ角度の太陽を眺めていると思うと親近感を覚える。地中海性気候だが、冬にはたまに雪が降るという点でも似ている。

 本当にヨルダン川が凍る日もあるかもしれない。キリスト教に関心があった光太郎は度々かの地に思いをはせていたのだろう。ただ「智恵子抄」が出た当時は、イスラエルが建国する1948年より以前だから、その後の激しい紛争については知る由もなかった。

 三つの宗教の聖地エルサレムが再び揺れている。首都問題は建国以来くすぶっていたが、トランプ米大統領がイスラエルの首都と認める意向を示したことに対してアラブ諸国が一斉に反発、欧州や国連も米国の行動に懸念を強めている。

 中東の紛争は宗教に加え民族や部族の対立が絡み合って、他国が介入するほど泥沼に陥りやすい。トランプ氏には現地の寒さに肌感覚で思いをはせる慎重さが求められよう。同じ角度の太陽を仰ぐ者として問題の平和的な解決を切に願う。

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