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思いっ切り泣いて

2017年12月4日
 松崎有理さんという東北大理学部卒のリケジョが書いた本に「架空論文投稿計画」がある。タイトルは怪しいが内容は至ってまじめで胸にすとんと落ちることが書いてある。

 本書に収録された架空論文の一つが「プラス思考はほんとうにプラスか」。プラス思考は成功・達成につながりマイナス思考は失敗・後悔のもとという、一般的に信じられている図式は果たして本当なのか筆者がまじめに検証を試み、論文としてまとめたものだ。

 プラス思考で考えたくても悪いことが続くとついマイナス思考に陥ってしまう。読者相談室を通して職場に障害のある息子を持つ母親からメールが届いた。息子が学校で倒れ、コンクリートで頭を打って、血がにじむけがをしたという。

 転倒の原因は、これまで分かっていた障害とは別な病気だったそうだ。その日は新聞を読んでも内容が頭に入らなかった。「また神様は私から取り上げていく…なぜうちの子なんだろうっていくつ思えばいいのかな。希望は毒だという言葉を思い出してしまった」。

 心細くさせまいと、余計な心配をかけまいと、何があっても家の中を明るく保つため家族の前ではなみだを流さないお母さんなのだろう。メールの最後は「家族はみんな自分の部屋に行ったからもう泣いてもいいかな」と結ばれていた。

 松崎さんの論文の結論はこうだ。〈プラス思考は現実逃避につながる。立ち直るためにはマイナス思考の方がいい場合がある〉。ゆえに〈ときには思いっ切りくよくよした方がいい〉。今は我慢などせずに泣いてほしい。あしたのために。

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