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一刻も早い復旧を

2017年10月8日
 JR九州のドル箱のひとつとなった豪華寝台列車「ななつ星」には運行開始以来のルールがある。「応募多数の場合は、厳正かつ公正な公開抽選を経てお客様を決定する」だ。

 「世界の王さん」とて例外ではなかった。「懇意にしている人がどうしてもななつ星に乗りたいから御社にかけあってくれ、と無理なことを言ってきましてね。なんとかなりませんか」。予約希望が殺到する中、JR九州にかかってきた王貞治さんからの電話だ。

 繰り返しになるが、何といっても「世界の王さん」からのお願いである。当時、同社社長だった唐池恒二さん(現会長)も、ずいぶん悩んだらしいがひと晩考えた末にお断りの電話を入れたという(唐池恒二著「本気になって何が悪い」)。

 台風による土砂流入で日豊線臼杵-佐伯間が不通になり、県内の貨物輸送に遅れや取扱量減少といった影響が出ている。利用客や観光への影響も大きく不安が募る。JR九州の復旧目標は来年3月。冬を前にした今、桜の咲くころと聞くとため息が出そうになる。

 「ななつ星」チケットについては、その後も東京の政治家や財界の有力者から「(抽選抜きで)融通してほしい」との要望が相次ぎかなり粘られたこともあったとか。そんな場合は「あの王さんにも断りました」の決めぜりふが効いた。

 世界の王さんといえども「ななつ星」とドラフト会議の抽選は避けて通れないというのが本稿のオチ。JR九州の心意気や良しだが、利用者の不安な気持ちだけはしっかりと忖度(そんたく)してもらいたいものだ。3月とはいわず一刻も早い復旧を。

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