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渡り鳥も寄る尖閣諸島

2017年9月13日
 大淀川の川面を飛び回っていたツバメがいない。夏鳥は南の国へ旅立ったのだろう。大海原を渡る鳥たちの無事を願う一方で、国境を軽々越える彼らをうらやましくも思う。

 日本政府が尖閣諸島(沖縄県)を国有化して5年たった。日本の実効支配を崩そうと、中国は公船による領海侵犯を恒常化させている。おそらく尖閣諸島も渡り鳥にとっては中継点だろう。彼らの大事な休息地が両国関係を悪化させている一大要因になっている。

 「中国では昔から、海まで支配が及ぶという考えが強い」。そういう統治思想の一端として、中国通である宮崎市の書道家森和風さんが「連島境界刻石二種」という珍しい書物を貸してくれた。岩石に刻まれた文字を原寸大で載せている。

 約2千年前に土地の境界を定めた内容。20世紀末に中国江蘇省の海岸近くで発見された。古式の隷書を学ぶための貴重な資料だが、注目すべきは領海の考え方。解説によると境界線は東の海へ向かって無限に延び、それぞれを領海として定めるという発想らしい。

 この区分からすると、日本列島までのみ込まれそうだ。東シナ海に限らず、南シナ海でも軍事拠点化を次々進め、領有権を主張する中国を見ると、古代の統治観は中華思想に名を変えて今でも幅を利かせているのでは、と疑ってしまう。

 刻石は、ちょうど前漢・後漢にはさまれて15年ほど新が建国された時代。皇帝の王莽(おうもう)は泣き方の上手な者を重用したと言われる。尖閣の問題は当面棚上げしてでも、ここは「鳴き」の上手な渡り鳥が両国間をとりもってくれないだろうか。

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