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傾斜度と自殺率

2017年9月10日
 住んでいる場所の傾斜度が高いほど自殺が多い? 面積の約9割を中山間地域が占める本県としては聞き捨てならないデータが昨年の厚生労働省による自殺対策白書にある。

 自殺傾向を地理的な側面から分析するのは異例だろう。細かく全国各地の傾斜度を割り出し自殺者数との関係を調べている。確かに傾斜度が急になると自殺率が高くなる傾向はうかがえた。理由として「世帯が離れていて、隣人との接触が困難」なことを挙げる。

 厳しい環境に打ち勝とうとする克己心から、他人の助けを求めない傾向があるという研究もあるそうだ。一方、自殺率が低かったのが離島。理由として考えられるのが人間関係の濃さ。地縁や血縁で顔見知りが多く、出会う機会も多い。

 これらの結果から白書は「自殺対策において人と人のつながりは重要な役割を担っている」と結論している。なるほど、と思う。本県の昨年の自殺者は205人。ここ数年減少傾向にあり、ピーク時から半減したが、自殺率は依然全国平均より高くワースト10位だ。

 山間部が多く近所づきあいが困難であることは高い自殺率の一因なのだろう。ただ濃密な人間関係は時にマイナスにも作用する。本紙連載の「みやざき考福論」では「地域の人間関係の密度は自殺に影響する」と指摘する専門家もいた。

 狭い社会では、うわさはすぐ広まる。互いに監視し合って息苦しいこともある。希薄でも、濃密すぎても悩ましい人間関係の難しさだ。悩んでいる人が気軽に相談できる受け皿づくりには行政の力が必要だろう。今日は世界自殺予防デー。

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