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鷲は舞い降りた

2017年9月7日
 ジャック・ヒギンズ著「鷲は舞い降りた」は、ときのイギリス首相チャーチルを誘拐もしくは暗殺せよ、との指令を受けたドイツ軍落下傘兵たちの作戦を描いた冒険小説だ。

 とある村にチャーチルが静養のため訪れるという情報を得て、シュタイナ中佐と部下たちは軍服の上にイギリスの迷彩戦闘服を重ね着して、空から舞い降りる。だが水路に落ちた子どもを救助しようとして隊員のひとりが水車に巻き込まれて死に、正体がばれる。

 作戦が実行された場合、成功の確率はどれくらいか。チャーチル首相ではなく北朝鮮の金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長らの排除を目的とした作戦のことだ。韓国の宋永武(ソンヨンム)国防相が国会で作戦部隊を12月1日に創設する、という考えを表明した。

 今昔、洋の東西を問わず独裁者と取り巻きたちは用心深いものだ。まず居場所の特定も難しかろう。正恩氏には複数の影武者がいるとの情報もある。また仮に作戦がうまくいって排除に成功しても、兵士らが無事に帰還できる手段を確保できるのか。心もとない。

 日本の上空を横切って飛ぶミサイル発射と大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載可能な「水爆」と称した核の実験を連続して行った北朝鮮の許し難い暴挙を受けて、韓国は「斬首」と名づけた作戦遂行のための準備に踏み切るという。

 ハゲワシのように舞い上がっていく正恩氏への警告を兼ねた部隊創設。命惜しさに舞い降りてくれればいいが作戦が決行されれば無数の兵が死ぬだろう。シュタイナらの勇気に感動できるのは小説だからで現実は血なまぐさい結末になる。

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