ホーム くろしお

自制心

2017年8月12日
 世界の果てに怪物のような種族が住んでいるという伝説が、中世にアングロサクソン人の「怪物の書」によって拡散していった。その種族の名前はブレムミュエス族という。

 16世紀終わりにドイツで刊行された外国紀行集に描かれたさし絵から、当時の人たちはブレムミュエス族を弓と矢を手に持つ凶暴にして自制心の欠如した種族と想像していたことが分かる(ローラ・ウォードなど著「悪魔の姿 絵画・彫刻で知る堕天使の物語」)。

 北朝鮮の朝鮮人民軍の金絡謙(キムラクキョム)戦略軍司令官が新型中距離弾道ミサイル「火星12」4発を米領のグアム沖合30~40キロの海上に、同時に撃ち込む案を検討していると表明した。実施されれば島根、広島、高知県の上空を通過することになる。

 その前日には北朝鮮が大陸間弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の開発に成功したとの報道を受けてトランプ大統領が「米国をこれ以上脅さない方がいい。(さもなければ)世界が見たこともないような炎と怒りに直面することになる」と武力行使まで示唆した。

 まさに売り言葉に買い言葉の応酬が続き、抜き差しならないところまできた米朝関係。金司令官の表明には「米大統領が『炎と怒り』などと妄言を並べ立て怒り狂う火星砲兵(ミサイル兵)の神経を逆なでしている」という言葉もあった。

 世界の果てまで探してもブレムミュエス族はいなかった。自制心を失った結果、災禍を招いてきたのは人類自身である。そのことをいま一度考えてほしい。手にした弓に矢を4本もつがえ、まさに放たんとする国と超大国双方の指導者に。

このほかの記事

過去の記事(月別)