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渋谷暴動事件

2017年6月20日
 閻魔(えんま)大王さまの裁きを受けるのも簡単ではない。亡者は無常鳥(むじょうちょう)と抜目鳥(ばつもくちょう)が番をする「門関の樹の下」へ連れて行かれ、そこで二羽の鳥の激しい怒りを受けつつ関を通過する。

 閻魔の国との境にある死天山の坂ではつえを、石の道ではわらじを頼りに歩く。服や食物はなく飢えや寒さに耐え山を越えたところで目的地に到着。ようやく前世の悪行を冥土の国の裁判官である十王によって裁かれる(小栗栖健治著「図説 地獄絵の世界」)。

 長い長い時の旅路の果てに裁きの場に到着した男がいる。過激派「中核派」活動家の大坂正明容疑者だ。身柄を勾留されていた大阪府警から東京・霞が関の警視庁本部へ移送され、渋谷暴動事件についての、本格的な取り調べを受ける。

 大坂容疑者は1971年11月、沖縄返還協定に反対するデモに参加、警備していた新潟県警巡査(殉職後警部補に昇進)を仲間と一緒に火炎瓶などで襲い、殺害するなどした疑いで翌年、指名手配された。逃亡期間は警察庁指定の重要指名手配容疑者の中で最長。

 大坂容疑者は複数の非公然アジトに潜伏していたとみられる。このため警視庁は中核派が組織的に逃走を支援していたとみて、関わった他の活動家について犯人蔵匿(ぞうとく)容疑等を視野に捜査し、指示系統や役割など事件の全容解明を目指す。

 筋金入りの活動家が罪を罪として認めることはないだろう。潜伏中、誰がつえを手渡し、わらじを履かせ、服や食べ物を与えたのか。隠れみののわらを一本ずつ解きほぐすような捜査になるはずだ。本人を捕らえて終わりの事件ではない。

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