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とうちゃん

2017年6月18日
 梶原一騎原作の野球漫画「巨人の星」の一場面だ。上流家庭の子弟が通う高校の入試面接で主人公の飛雄馬が父親の職業を問われてこう答える。日本一の日雇い労働者、と。

 飛雄馬は昼夜分かたず工事現場でつるはしをふるって進学費用を工面してくれた父の一徹を誇りに思い、働く姿を脳裏に描きつつ「とうちゃん」とつぶやく。長尺ものの漫画の中で特別、印象に残るのは汗水たらして働く父親への感謝が凝縮された場面だからだ。

 父親をどう呼ぶかは当然ながら時代や地域によって違い、変化してきた。例えば近世後期の江戸では中層以上の武家、町人の間では「おとっつぁん」が使われ、一般庶民は時代劇「子連れ狼」でよく知られる「ちゃん」が一般的だった。

 「おとうさん」という呼称は明治36年の第一期国定読本「尋常小学読本-二」に「タローハ、イマ、アサノ アイサツヲ シテヰマス。

 オトウサンオハヤウゴザイマス」という例文が掲載されたことがきっかけになり全国へ広がった(神永曉著「悩ましい国語辞典」)。

 きょうは父の日。母の日に隠れて目立たないとか、いまいち話題にならないとされるが街を歩けば贈り物用セールがあちこちで展開されている。きのうは宮崎市内のデパート地階の酒売り場で何を買うか思案中の母娘らしい二人を見た。

 物を贈るという行為もいいが大切なのは心のこもった言葉だろう。とうちゃんでもおとっつあんでもおとうさんでもパパでもいい。その上に「日本一の」をのせて感謝の気持ちを伝えればぐっときて、疲れも吹っ飛ぶことまちがいなしだ。

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