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忖度文化

2017年6月14日
 米国に留学した日本人女子学生の話。ある米国人家庭に住み込んだ。奥さんが「秋だわね。木の葉がこんなにも…」と言うと、学生は察して「私掃除します」と取り掛かる。

 女子学生は、万事この調子で奥さんの意向を察して対応したからくたくたに。そのうちノイローゼになってしまったという。社会学者で京都大学名誉教授の竹内洋さんが「中央公論」6月号「忖度(そんたく)文化に潜む老獪(ろうかい)なポリティクス」の中で伝聞として紹介している。

 安倍首相の友人が理事長を務める学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設に関し「総理の意向」が働いたのか国会で大きな問題となっている。ここでも先の森友学園問題の時のように、省庁の役人間で「忖度」が働いたという見方が強い。

 先方の意向やその場の空気を察して行動する共感の文化は日本社会に深く浸透している。そこで忖度が機能するのだが、明確な言葉や表現になっていないから、拡大解釈されたり時には誤解もある。竹内さんは「忖度は意図的に策略としても使用される」という。

 例えば道徳教科書検定で「パン屋」が「和菓子屋」に変わった件。だれも「変えろ」と言ってないが、ひそかに誘導した例と疑う。上位者だけでなく、下位者もまた忖度を利用する場合がある。意図的に上位者の意向に尾ひれを付けるのだ。

 確かに、太平洋戦争中に政治家や軍人が「陛下の大(おお)御心(みごころ)」と称して独断専行を図ったのもそうだろう。権力を増す安倍政権の顔色をうかがい、省庁内で忖度は増す一方。役人は保身のための忖度よりも国民の気持ちをまず忖度してほしい。

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