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天才少年VSルパン

2017年5月16日
 天才と呼ばれる人はほぼ早熟である。およそ百年前に書かれた小説の作家もそう考えていたのだろう。アルセーヌ・ルパンシリーズ「奇巌城」のモーリス・ルブランである。

 某伯爵の屋敷に盗賊たちが忍び込む。伯爵のめいが一味の首領を狙撃するが、大けがを負ったはずの一味の首領は発見されない。また、屋敷から盗まれたものもない。謎だらけの事件の現場に現れ、卓越した推理力で真相に迫るのはまだ高校生の探偵少年だった。

 小説の中に登場する数字と点、アルファベットと小さな図形から成る奇っ怪な暗号メモも探偵少年のやわらかな頭脳が解読してしまう。「天才の先輩」ともいえるルパンとの息詰まる頭脳戦は時代を超えて、今もなお読者を引きつける。

 将棋の最年少プロ棋士、藤井聡太四段の快進撃が止まらない。12日、大阪市の関西将棋会館で指された王将戦1次予選で西川和宏六段を破って自身の持つデビュー後の公式戦無傷の連勝記録を17に更新した。対局は午前10時に始まり、84手までで投了に追い込んだ。

 天才少年は高校生どころか、まだ14歳の中学生。あどけなさの残る表情の持ち主とあって棋界以外からも耳目が集まる。対局会場には写真を撮ろうと待ち構えるファンがいるそうだ。勝ち続けるほどにフィーバーの度合いは増すだろう。

 奇巌城のラストには手に汗握る逆転劇が用意されている。少年に追い詰められてもルパンには勝算があった。棋界のこれからが楽しみ。藤井四段とルパンのごとき先輩たちとの間で百年を超えて語られる「神の一手」が生まれるだろうから。

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