ホーム くろしお

学芸員は観光宣伝係?

2017年4月18日
 京都といっても「府」となると奈良からの方が近い山中や日本海まで実に幅広い。よく寺社建築を見て回っていたころ、綾部市にある光明寺という寺を車で訪ねたことがある。

 今は舗装されていると思うが、ガタガタ道を長く上っていく。こんな所に鎌倉時代建立の二王門があるのか、と不安になったが、突如現れた門は堂々としており苦労が吹き飛んだ。国宝指定だが来訪者はほかにいない。山深い静けさが古寺の雰囲気を高めていた。

 全国の寺を回ると、国の重要文化財でも「国宝」の看板を時々見かける。戦前区別がなかったころの名残で、「国宝」の方が観光寺院の箔(はく)が付くからそのままにしている節がある。もっとも文化財的な価値と誘客力の高さは比例しない。

 寺や美術館の思惑とは関係なく、文化財を学術的に調査、保存を進めるのが学芸員の役割だ。文化財が観光宣伝になる例もあるが、副次的な要素に考えたい。学芸員がある文化財の価値を過度に強調して観光の旗振りをしたら、文化財の価値体系が混乱しそうだ。

 だから山本幸三地方創生担当相の「一番のがんは文化学芸員」発言には驚いた。外国人観光客らへの発信が不十分という。観光の役割を担ってほしいなら、まず協力を願い出るのが民主社会の手続きだろう。なのに、いきなり戦犯扱い。

 発言を撤回したものの、問題は趣旨より言い回しの方が大きい。「がん」扱いに続き「連中は一掃しなければならない」と言い放つ人権感覚。民族浄化を連想させる表現に背筋が寒くなる。数で押し通す現政権のおごりに通じていないか。

このほかの記事

過去の記事(月別)