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真央ちゃん引退

2017年4月13日
 花見が好きでよく出かけた。桜が散るのを見届けるように歌人石川啄木が肺結核のため26歳で死去したのは1912年4月13日。最期をみとったのが妻、父、歌人若山牧水だ。

 「若山君は誰にも愛される目をしている」。啄木は日記に記しているように、牧水に好感を持っていた。交際期間は短かったが、最期まで丁寧に啄木の面倒を見た牧水の人の良さは、出身地である本県としては誇らしい。牧水が記した臨終の様子は貴重な記録だ。

 「世の中の明るさのみを吸うごとき黒き瞳の今も目にあり」。啄木忌の今日、歌集「一握の砂」の歌が浮かぶ。フィギュアスケート界から引退し、大きな話題となっている浅田真央さんがこれまで銀盤上で見せた演技を思い出すからだ。

 世の中の明るさを吸ったように輝いていた。明るくて、はつらつと見せる競技の性格もあろう。だからこそ、挫折や苦難ものみ込んで目標に向かい、笑顔を振りまく姿はけなげだった。世代を問わず親しまれた愛称「真央ちゃん」をここでも使わせてもらいたい。

 肩書は2010年バンクーバー五輪銀メダリストが筆頭になるのだろう。だが最も感動したのは4年後のソチ五輪だ。ショートプログラムは大きく崩れたが、翌日のフリースタイルでは生まれ変わったように完璧といえる演技を見せた。

 メダルには届かなかったが、この時の印象が後進に与えた影響は絶大だ。昨日の引退会見では花を散らす涙は見せず、ベストを尽くした満足感を笑みに浮かべた。お疲れさま真央ちゃん。アイスショーでまた大きな花を咲かせてください。

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