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いうやんか

2017年3月18日
 三波春夫さんが歌って大ヒットした1970年の大阪万博テーマソング「世界の国からこんにちは」を作詞したのは当時、2児のお母さんだった島田陽子さんという詩人だ。

 こどもにもわかることば、美しい日本語、そして1970年という未来のイメージを考えながら、「人類の進歩と調和」という万博のテーマの精神を、歌詞のなかにそっと盛り込みたい-。テーマソングの詞に懸賞応募する際に、島田さんが心を砕いた点だった。

 2025年万博大阪誘致について経産省が説明するために作成した報告書最終案の関西弁版で、万博を「人類共通のゴチャゴチャを解決する方法を提言する場」と表現、ゴチャゴチャの具体例として「例えばやな、精神疾患」と記載した。

 使われた関西弁も地元の人たちにとって不自然な表現が目立ち、街角インタビューで感想を聞かれた人の反応もおしなべて否定的だった。大阪府幹部からも「関西人をばかにした上に人権侵害だ」などと批判され、公表からわずか一日で撤回されることになった。

 東京生まれの島田さんは後に大阪弁でも詩を書くようになった。そのきっかけは塀の外から聞こえてきた関西女性たちの会話だったという。「日常のことばがこんなに美しいとは」と感動したそうだ(水内喜久雄著「詩にさそわれて」)。

 「いうやんか やさしい かおして いうやんか やんわり きついこと いうやんか」(いうやんか)。低学年のこどもにも理解できるほど平易で、美しい。報告書案を作成した経産省のお役人にそらんじてほしい島田さんの詩の一節だ。

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