ホーム くろしお

市長の孤独と責任

2017年3月17日
 16世紀前半の「君主論」。権謀術数のイメージがあるが、著者マキャベリの伝記はおもしろい。小国フィレンツェ共和国の外交官として大国と渡り合い政争にも巻き込まれた。

 多くの政治家の浮沈を間近に見ただけに「慕われるより恐れられろ」「自らを磨き優秀な部下を集めよ」といったリーダー論は説得力がある。少子高齢化で先が見通せない地方の今を乱世ととらえれば、かじ取りする自治体の首長にも参考になる教訓が多いはずだ。

 首長に決まった休みはない。来訪者は頻繁に訪れ会合の連続。「市役所で働く人たち」(谷隆一著)という本で、ある市長が「私は議員を3期務めたが、市長は議員の100倍忙しい」と嘆く。多忙さと責任の重さは首長の宿命といえよう。

 年度末、図ったように県内沿岸部の市では市長の話題が相次いでいる。来年2月に任期満了の延岡市長選に向けて現職の引退、宮崎市長選では現職の立候補表明があった。来年7月の串間市長選では、現職が体調面の不安を理由に任期前に辞任する意向を示した。

 表明のタイミングもぎりぎりの判断だっただろう。日南市では市長が私的メールを誤送信して、ネット上に拡散。市議会傍聴席が市民で満席になるほど物議を醸した。トップの言動に市民は敏感に反応することを図らずも証明した形だ。

 「時間は何も解決してくれない」。マキャベリはリーダーの心がけとして素早い判断力を強調し、優柔不断は軽蔑を招くという。引くも続けるも1人ですべての責任を負う。首長らの孤独に同情しつつ、地域を導く自覚をさらに求めたい。

このほかの記事

過去の記事(月別)