ホーム くろしお

石油より知の一滴

2017年3月15日
 半世紀近くも昔のこと。来日したアラブ産油国要人に日本の政治家がこんなことを言った。「貴国がうらやましい。石油のないわが国は外国から全部買わねばなりません」。

 雨模様の日だったのだろう。産油国の要人は静かにこう答えたという。窓の外を指さして、「もし、あのようにわが国にも空から水が落ちてくるならば石油など一滴もいりません」。少年時代に読んだ日本版リーダーズダイジェストに収録された記事と記憶する。

 王族や閣僚、使用人など1000人を超える随行員を伴い、都内の高級ホテルなど1000室以上を予約、移動用のハイヤー約500台をチャーターするなど、度肝を抜く話題がオンパレードのサウジアラビアのサルマン国王ご一行だ。

 ただしオイルマネーの威力にも原油価格の低迷などで陰りが見えるらしい。そうでなくても、掘り尽くせばやがて枯渇する石油資源である。国王みずからが来日した目的は、石油への依存からの脱却に向けて日本からの投資拡大など協力を呼び掛けることだった。

 日本側にはサウジを後押しすることで中東市場開拓につなげたいとの思惑がある。首相と国王の会談でサウジの経済構造改革の支援に向けた協力強化を確認し、日本企業のサウジ進出を促す経済特区創設が柱となる合意文書を発表した。

 合意には再生エネルギーの情報共有も含む。日本にとって石油依存からの脱却は産油国以上に大切な課題。かつて石油の一滴は血の一滴というスローガンがあった。血を、知に置き換えて築きたい未来だ。ただのもうけ話にしてほしくない。

このほかの記事

過去の記事(月別)