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第32回会合 中長期的視点が必要

2012年10月20日
(2012年10月19日付)

 宮崎日日新聞の報道の在り方を検証する「宮日報道と読者委員会」(委員長・青木賢児メディキット県民文化センター理事長、3人)の第32回会合は12日、宮崎市の宮日会館であった。次期衆院選に向けた選挙報道と、本紙が5月から発行している「宮日こども新聞」をテーマに、青木委員長と有馬晋作(宮崎公立大教授)、丸山亜子(宮崎大准教授)委員の3人が本紙の編集担当部長らと意見交換した。(司会 編集局次長・田代学)

■選挙報道/背景、歴史掘り下げて/読者の大局判断材料に

 -国政は今、民主、自民党とも代表選、総裁選を終え、後は解散のタイミングだけという状況。混迷する今の政治をどう捉え、どう報道していくか。これまでの衆院選に向けた報道について意見を。

 <青木委員長>政界はこの数カ月で自民党総裁選、日本維新の会誕生、野田内閣改造とさまざまなことがあった。一方、国内外でいろんな問題が起きており、政治はほとんど対応できていないという印象が強い。従来通りの政治、選挙報道では、この先どうなるかという国民の不安は解消できない。今のジャーナリズムは時代の流れにマッチしていないようだ。次の時代を生きていくヒントを示唆してくれる報道が少な過ぎる。政治に対し、国民の心境を代弁するような記事や企画を出してほしい。政治を追い掛けているだけでは国民、読者は満足しない。

 <有馬委員>選挙が近づくと急に選挙区の状況などの報道が出てくるが、もっと腰を据え中長期的に宮崎の政治を育てる報道が必要。そういう意味では「政権交代 宮崎の3年」は地方紙らしいよい連載だった。民主党政権の政策がどのように受け入れられ、どういう効果があったか、宮崎の現場で取材していて意欲的だった。もう少し分かりやすくするために、制度や事業の解説を(本文とは別に)入れるといい。最後に総括として、民主党政権の当初の理念や行った政策、それによる現場での状況や評価、指摘をまとめれば、読者の頭の中も整理できた。時々は宮崎の選挙や政党の歴史も特集してほしい。県民の意識を高め、大局的な判断を手助けする。

 <丸山委員>選挙が迫っている状況で、十分に意思決定するための情報が提供されているかという視点で読んだが、まだまだ不十分。候補予定者の動きや選挙区の様子、県内各党の動向など「動き」に力点が置かれ過ぎている。確かに動きは大事だが、こういう内容はインターネットの方が簡単に発信でき、情報の早さでは負ける。街頭演説をこなしたというより、どういう内容で演説し、何について訴えていたかを知りたい。そういうところに踏み込んでほしい。なぜそういうことが起こったのか、何を訴えようとしているのか、背景には何があるのか、歴史は何か。宮崎に昨日来た人でも、宮崎の選挙状況が分かる記事になっていない。また、何を明らかにしようとしているか分からない原稿が多い。何を聞きたくてインタビューしてコメントを取っているのか分からないものもあった。

 <森報道部長>次期衆院選に向けては、有権者の判断材料として、候補者の内面に迫る選挙報道を目指している。

 -今後の報道への要望は。

 <丸山委員>維新の会に関する報道が弱い。宮崎は維新政治塾生がおらず、ほかの都市とは影響が違うかもしれないが、地方に共通した問題はある。宮崎ともリンクする形で踏み込んだ話を読みたい。

 <有馬委員>マニフェストに対する評価が下がった。自治体選挙ではマニフェスト型選挙が普及し、地縁・血縁から政策本位へという流れができたのだが、今後衰退するのではないかと心配している。有効だった面があればきちんと伝えてほしい。維新の会はマニフェストとは違って具体的な工程表は出さず、大きなところで合意すれば官僚が道筋を付けるというやり方。いったん勢いがつくと、これは民意だと押し切る怖さがある。客観的に見て、問題点があれば是々非々で報道してもらいたい。育てるという意味では、地元選出国会議員の実績や様子が分からない。法案への賛否や定期的なインタビュー記事などがほしい。

 <青木委員長>マスコミの中に選挙報道に対する特別の意識がある。「選挙の公平性」に縛られていろんなものに配慮し、選挙報道を隔靴掻痒(そうよう)にしている。これはおかしい、もっと知りたいと思ったところはぎりぎりのところまで突っ込んで、ジャーナリズムが持つ力を十分に発揮するべきだ。政治の側、特に維新の会はメディアを使いながら政治活動を行い、大きな成果を上げている。普通の報道と同じようにどんどん攻め、深く取材し、責任ある政党、候補者を選別することがジャーナリズムに課せられた最大の課題。そうしないとマスコミは使われているという印象を拭えない。

■こども新聞/身近な話題で学びを/「親子で読む」機会提供

 -「宮日こども新聞」を5月に創刊した。全国の地方紙が取り組んでおり、5月現在、全国で少なくとも20社が発行している。

 <末崎文化部長>子どもに活字を親しめる機会をつくると同時に、多角的に新聞に関わることで生きる力を養ってもらおうと創刊した。1人、もしくは親子で読んで楽しんで学んで、参加もしてもらうことを基本に構成している。子どもの興味を引く記事を1面に置き、中の面にはニュースの解説や県内で頑張っている子どもの紹介記事を載せている。漫画や子どもの詩、短歌のほか、双方向の意味で投稿コーナー、学ぶという意味で英語学習のコーナーを設けている。

 <丸山委員>私は幼稚園時代から小学生新聞を毎週読んでいた。そのうち親が読んでいる新聞が面白そうだと思って読み始めた記憶がある。そうした経験からも、こういう企画には意味があると思う。ただ読んでいると、中学生に関する記事もあり、年齢の対象層が広い。ターゲットはどこに置いているのか。記事ごとに対象年齢が分かるようなマークを付ければ読む方も便利で親も安心。お勉強に徹していない点は賛否両論あるだろうが評価していい。しかし、勉強と気付かせずに勉強もさせてほしい。例えばこども編集局で、こども記者が初めに書いた記事と添削のプロセスも載せれば、いい文章の書き方を学べる。また、小遣いの使い方など身近な話から経済について学べたり、宮崎といろんな国々がつながっている話から国際感覚を学べたりする記事があるといい。

 <有馬委員>例えばピカソの記事など、大人が読んでも面白い記事があった。そういう記事はこども新聞にも新聞本紙にも同時に載せるという手もある。大人と子どもが共有できる話題を提供でき、世代間の橋渡しになる。大人にもこども新聞を発行していることを知らせることができる。また、有名な漫画家など子どもが知っている人材について、生い立ちなどを取材して載せるのはどうか。

 <青木委員長>紙面が生き生きして躍動感がある。作る人が面白がってやっているのかなと思った。昔あった小学生新聞、中学生新聞とは全く違うし、特集記事は面白いと思うものが多い。特に米大リーグ・ブルワーズでプレーする青木宣親選手の紹介、線香花火の図解記事が良かった。新聞のようなメディアがこういう取り組みをするのは必要だと思った。中学校で必修化されたダンスの話題も取り上げている。大人でも反対する人が多い問題について関心を持ってもらういいきっかけ。普通の新聞を読んでいて分からないことが分かる。

 <中川文化部次長>専門部署を立ち上げるのではなく、いろんな部署が協力して発行するスタイルで取り組んでいる。各分野の知恵や工夫、経験が生きて、こども新聞という新しい舞台で新しい化学反応が生まれている。対象年齢は、1人でニュースを読んで理解でき、社会にも関心を持つ年代を小学5、6年生ごろと想定し、小学5年~中学生を主な対象にした。


宮日こども新聞 新学習指導要領で子どもの読解力、表現力などを高める教材として新聞の活用が盛り込まれていることを背景に、「こどもの日」の5月5日に創刊。毎週土曜日に本紙を購読している全戸に無料で届けている。子どもの活字離れを食い止める狙いもある。タブロイド判8ページで、すべての面がカラー。本紙より文字を大きくし、写真やイラストを多用して分かりやすい紙面を心掛けている。


【写真】「次期衆院選に向けた報道」「こども新聞」について話し合った「宮日報道と読者委員会」=12日午後、宮日会館


本社側出席者
 代表取締役社長・町川安久▽取締役編集局長・大重好弘▽論説委員会委員長・河野州昭▽編集局次長・田代学▽報道部長・森耕一郎▽経済部長・鳥越眞也▽文化部長・末崎和彦▽運動部長・井野浩司▽地域報道部長・外前田孝▽写真部長・崎向秀次▽報道部次長・戸高大輔、諫山尚人▽文化部次長・中川美香▽読者室長・寺原達也