追い詰められた命を救おう
「商売上のことで思い悩み、無意識のうちに首をつっていた。前後のことはよく覚えていない」
友人から聞いた自殺未遂の経緯だ。幸い、家族の発見が早く一命を取り留めた。
根っから明るく、仲間を引っ張るタイプ。自殺未遂の後日談を聞いて認識を新たにした。表面上の弱さ、強さとは無関係。追い詰められればだれでも選択する可能性がある悲劇の結末だ。
自殺者が年間3万人を超す異常事態が10年以上も続いている。毎日約90人が自殺し、交通事故死の六倍近くに上る。
自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は米国の2倍、英国の3倍以上。欧米先進国より飛び抜けて高い数字だ。
高齢化地域ほど深刻
本県の自殺者数(2007年)は過去最悪の394人(前年比32人増)。自殺率は34・6人で秋田県に次いで全国2番目に高い。
自殺率は高齢化が著しい地域ほど高く、もともと自殺者が多い団塊世代が60代に差しかかる。高齢化に見合う、社会保障体制が整備されていないことを考慮すると、生半可なことでは、減らすのは難しいだろう。
ここ数年で自殺予防は少し前進した。自殺対策基本法が06年に成立。自殺率を20%減らす目標を掲げた国の自殺総合対策大綱が07年に閣議決定された。
県自殺対策推進本部(本部長・東国原知事)は2016年までに05年の自殺率を基準に25%減らすことを決めた。国の目標値よりハードルを高くした。
国際ビフレンダーズ宮崎自殺防止センターによる電話相談も開設されて1年が経過、県内からのアクセスが増えている。
複雑な要因絡み合う
自殺者は心身の健康や経済問題など複雑な要因が絡み合い、生と死のはざまで揺れ動く。
そして、自殺を考えながらも助けを求めている。危険な兆しに早く気づき、予防することが大切で、家族だけでなく、地域や職場にその役割が求められる。
自殺予防の二本柱は、心の病気の早期発見と治療、助けを求める方法の提示だ。
特定非営利活動法人(NPO法人)「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)の最近の調査によると、自殺前一カ月以内に医療機関を訪れた自殺者は6割超もいた。「命綱」に当たる相談機関の研修や充実も課題だろう。
自殺は死にゆく人の問題だけではない。家族や親しい人の心に深い傷を残す。
自殺者に対して、約10倍の未遂者がいる。悲しむべき現実が私たちの身近に存在する。
自殺予防効果が表れるまでに10年はかかるとされる。
目の前にいる人の死を防ぐことに心を砕きつつ、長期的視点で弱者を孤立させない希望のある社会の構築に取り組みたい。
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