くろしお

2008年07月13日

 お笑い出身の東国原知事のギャグ的なネーミングの才には定評がある。最近の「愛のムチ条例」は物議を醸しているが、一つの名称が状況を一変させる力を持つことはある。

 例えばいわゆる「限界集落」。中山間地におけるこの言葉が与えた「衝撃的な」現実とともに、当事者にとっては心情としての「残酷な」響きを併せ持っていた。名付けによって新しい事態が発見され、その名前によって人々の意識も変わる。恐るべきは名称か。

 中山間地から不評だった限界集落の名称で、県が始めた新たな呼称募集にいま、県内外から約五百件の応募が寄せられている。締め切りは八月末だが、新たなネーミングで中山間地の活性化を願う「応援隊」の存在は大きな励みだろう。

 農山村の限界集落問題の今日性について、小田切徳美明治大教授が月刊誌「世界」(8月号)で書いている。テーマは「農山村再生の課題」。本紙の発言も引きながら、限界集落に象徴される中山間地の再生が、いかに政策的にも重要であるかを丹念に検証する。

 中でも「農山村の2010年問題」という指摘は注目される。同年に過疎法、市町村合併特例法、中山間地域等直接支払制度が更新期を迎える。加えて中心的担い手だった昭和1けた世代の本格的な高齢化。農山村には大転機に違いない。

 同論文では、中山間地の人々にとって、外からのまなざしがいかに大切であるかも強調する。見守られていることが「心の支え」になると。集落はいま懸命に生きようとしている。呼称応募はその友情のあかしだろう。筆者も応募しなくては。


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