社説

2008年07月11日

犠牲者ゼロへの努力怠るな

 新潟県中越沖地震(2007年7月16日)から間もなく1年になる。

 マグニチュード6・8。最大震度6強。死者15人。負傷者2345人。東京電力の柏崎刈羽原子力発電所は現在も停止したままだ。

 この1年に限っても中国の四川大地震、ミャンマーのサイクロンなど未曾有の自然災害がアジアで続き、国内では岩手・宮城内陸地震が無惨なつめ跡を残した。

 08年版の防災白書を見る限り、福田康夫首相が昨年10月の所信表明演説で掲げた「災害発生時の犠牲者ゼロ」への道のりは険しい。むしろ、地域防災力の低下など憂うべき状況が白書から浮かび上がってくる。

■実践的な情報提供を■

 阪神大震災(1995年1月)で6400人余りが亡くなり、東海地震では死者約9200人という被害想定も出ている。

 地域でやれることは山ほどある。政府も災害のリスクや備えについて、より分かりやすい、実践的な情報を提供する必要がある。

 「犠牲者ゼロ」を目指す防災基盤づくりの柱の一つが、災害時要援護者対策の推進。65歳以上の高齢者や障害者、妊婦ら災害時に助けが必要な人をリストアップして、その情報を市町村や自主防災組織などが共有して一人一人について避難支援プランを立てる。

 例えば、人口約10万人の神奈川県伊勢原市。2007年6―8月に要援護対象者2442人に登録カードを送り、希望した1179人をリストアップした上で、自治会を通じ、希望者1人に災害時の支援者2人を割り当てる作業を進めている。

■政府目標に及ばない■

 中越沖地震で78・6%、06年の豪雪で65・1%、05年の台風14号で69%。災害の死者・行方不明者に占める高齢者の割合だ。

 政府は06年3月に要援護者の避難支援ガイドラインをつくり、支援プラン作成を各自治体に呼び掛けてきた。だが、内閣府が「伊勢原市並み」と評価しているのは全国1827市区町村のうち72にすぎない。

 白書によると、こうした支援の担い手として真っ先に期待される消防団員は1954(昭和29)年の202万人から2007年には89万人に減少した。

 こんな数字もある。大地震に備え家具などを固定している人は02年の14・8%から07年には24・3%に増えたものの、政府目標の60%には遠く及ばない。

 犠牲者ゼロに向けた取り組みは、個人の災害リスク認識や地域防災力の整備といった素地づくりから始めなければならない。

 天災には似たパターンはあっても、同じものはないという。どう備えても不可抗力の部分が残る。

 備えがあっても憂いは消えないが、犠牲を限りなくゼロにするための努力は惜しみたくない。


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