くろしお

2008年05月21日

 延岡出身の大相撲立行司、木村庄之助(本名・内田順一さん)が「結びの一番」を務める夏場所。華麗な裁きの中にも、こんな取り組みは軍配の上げ方に困るのではないか。

 巨体の横綱が腕力に物を言わせて「張り手」を放った。古参の小兵力士は土俵際に吹っ飛んだ。横綱はそのまま押し切ろうとする。が、古参力士はありったけの力で土俵俵で踏ん張る。それどころか、わずかな余力で押し返した。ずるずると後退していく横綱…。

 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度をめぐる政府・与党の対応は、さながら荒れる土俵を見る思いだ。2年前、巨大与党の強行採決という「強襲」がそもそもの始まりだった。相手は後期高齢者。誰もが勝負にならないと思った。

 ところがである。土俵際に追い込まれた高齢者の最大の強みは「俵まで後がない」という必死さ。横綱の横暴を訴えて土俵中央まで押し返し、ついに制度を見直させるまでに至った。高齢者に「うば捨て」制度と嘆かせるなど、とても「横綱相撲」にはなってない。

 見直しの中身は、低所得者の保険料負担を軽くすることが眼目。所得に応じて最大7割減となっている軽減措置を、9割まで拡大するという。まずは一歩前進だろうが、制度そのものは温存される。これで不満が解消するとは思えない。

 何より問題は、世界に例を見ない「75歳以上」の切り離しだ。保険料が今後増えるのは目に見えている。わずかな年金からの天引きも非情だし、医師会も自治体も反発している。庄之助ならずとも、この勝負は「仕切り直し」が筋だ。


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