くろしお

2008年03月17日

 大学の先生が言い始め、定着した〈限界集落〉。息も絶え絶えに末期を迎えた人のようで、語感が悪い。〈高齢過疎集落〉と言い換えられても、現代版うば捨て山のようだ。

 厚労省が発表した2030年のこの国の姿は、人口が1割減り、総世帯数は現状のまま。1人暮らし世帯が30%増え、夫婦と子どもの世帯を上回る。この中でも65歳以上の〈独居老人〉は05年の約2倍になるという。限界集落が増えることを暗示している。

 1人で暮らした吉田兼好は〈人はおのれをつづまやかにし…世をむさぼらざらんぞいみじかるべき〉と、質素にし、利を求めることを忌み嫌った。しかし、現代は地方の隅々にまで市場主義が浸透し、中世のような隠遁いんとん生活は送れない。

 元気なうちは高齢者が「祭りができない限界、過疎など何するものぞ」と、支え合うこともできるだろう。共助意識が生きているためだ。それが1人2人と倒れると、共同体は崩壊する。高齢化率5割以上で戸数20以下の限界集落は、県内に151カ所ある。

 こんな悲惨な状況を総務省は「人口減少は地方にとってチャンス」とのたまう。活性化研究会は「大都市部に住む団塊の世代を、地方に移住してもらう」ことを目的とした報告書をまとめた。省庁が違うと、見方がこうも変わるものか。

 総務省は地方を「ニューフロンティア(新天地)」と名付け「柔軟な発想を持つ」よう促している。ならば、税源を地方に移してから言ってほしい。限界集落を省庁の権益に利するのなら〈世をむさぼらざらん〉行為そのものではないか。


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