くろしお

2009年01月04日

 昨年暮れの「窓」欄に宮崎市の主婦山本良子さん(73)が、息子のお嫁さんに着物ひとそろいを贈った顛末てんまつを寄せていた。しゅうとめから息子の妻へ、山本家の着物文化は伝えられた。

 和服姿がおなじみの作家宮尾登美子さん(82)も、着物には強いこだわりがある。男性の和服の極めつきははかまだといい、「男のお色気」の代表格に挙げる。むろん女性の着物は世界が嘆息する「民族衣装」。俳句の季語にも似た季節感を、着物でも大事にしたいと。

 成人の日を前に、着物選びに忙しい家庭も多かろう。普段は気にしなくても、女性には成人式の振り袖は別らしい。が、その振り袖に近年は異変が起きているという。レンタルが主流だが、バリエーションの広さが現代的というべきか。

 カタログを見て驚いた。半襟のつもりだろうか、胸元に黒いレースのフリル。帯締めに金色の鎖。耳から大きなイヤリングが下がり、首にはパールのネックレス…。さすがに式場にそのままのお嬢さんは少ないだろうが、これがトレンドだと思うと複雑な気分だ。

 宮崎市内の貸衣装店に聞いた。「親子で好みが違う場合が多い。着物では絶対使わない洋服の小物を持参される方もおられる。最近は何でもありという印象でしょうか」。呉服店にも和裁士にもニューウエーブは押し寄せているらしい。

 かたくなに古式を守れというつもりはない。ただ最近は中国など外国で製造、仕立てられる例も多い。安くなった半面で、日本の職人技が消えていくのと表裏にある。着物は日本人の美意識や知恵の宝庫。着物文化も伝統と現代の間で揺れる。


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