県内の特集

'08みやざき最前線【08.4.1-08.12.1】

■逆風にも悲観はせず

null
 塗装がはげ落ちた資材置き場の鉄骨、色あせた冷凍倉庫の壁…。海と向かい合ってきた時間の長さがにじむ。大分県との県境にほど近い、延岡市北浦町の直海のうみ地区。56世帯のほとんどが漁業で生計を立てている小さな港町に、燃料費の高騰や魚価の低迷など逆風が容赦なく吹き付ける。

 「漁に出ても元を取るのがやっと。この町じゃ漁業でなければ生活していけないというのに…」。直海で生まれ育ち、17歳から漁師を続ける長瀬正剛さん(50)はぽつりとつぶやいた。

 長瀬さんは1人で小型底引き網船に乗りコウイカやヒラメを狙う。午後10時から翌日午後1時まで15時間も海に出る過酷な日々の連続だ。操業中は誰も助けてくれない。船の操縦から網の上げ下げ、安全確認と気を抜くことができず、少しの仮眠もままならない。

 長瀬さんは「荷揚げと網の手入れが終わると、もう夕方。家には食事と寝るために帰るだけ」と笑う。それでも、週1回の定休日のほかは台風でも来ない限り休むことはない。

 漁から戻った長瀬さんが、いつもより獲物が少ない網の中を見て悔しそうに唇をかんだ。「これだけじゃ、ほとんど利益はないな」

 使用条件が漁業、農業用に限定されるA重油には税がかからないが、1リットル当たり86円(3月末現在)と4年前の2倍以上に上昇。運搬に使う発泡スチロール製の箱代や宮崎中央卸売市場(宮崎市)までの輸送費も合わせると、負担は1カ月で約25万円も増えた。にもかかわらず、魚価は横ばい。まとまった漁獲があっても以前ほど利益が上がらなくなっている。「かといって、欲を出せば魚がいなくなる。安定した漁場を守るために好きなだけ捕るわけにもいかない」。もどかしさが募るばかりだ。

 「自分で船を出すには経費がかかりすぎる」。長瀬さんは直海の漁師4人とともに、今月下旬から大分県佐伯市蒲江町に1カ月間の出稼ぎに行く。遠洋漁業でのモジャコ(ブリの稚魚)漁。1週間の船上生活を繰り返す厳しい環境だが日当3万円は魅力だ。「大学に進む末娘のために入学費を稼がないと。これも家族のためやね」と目元を緩ませる。

 逆風の中でも、長瀬さんは直海の将来を悲観してはいない。20、30代の若手漁師が親の後を継ぎ、巻き網船団に乗船して地元に活気を与えている。「若いやつらの頑張りは刺激になる。まだまだ負けてられないね」。黒く焼けた精悍(せいかん)な顔が、一層引き締まった。
(報道部・甲斐延明)

【メモ】県水産政策課によると、1990年に6230人だった県内の漁業就労者は2003年には3749人にまで減少した。60歳以上が約33%を占めるなど高齢化が進む一方、燃料費の高騰や魚価低迷で新規就労が困難になっており、担い手不足が懸念されている。

【写真】漁を終えた長瀬さんが港に戻ると、家族総出で荷揚げ作業にはげむ=延岡市北浦町直海
(2008年4月6日付)

[P.1/6]

関連記事

powered by weblio


ロード中 関連記事を取得中...

このほかの記事

特集一覧

宮崎日日新聞へようこそ

47NEWS 参加社一覧
北海道新聞 |  室蘭民報 |  河北新報 |  東奥日報 |  デーリー東北 |  秋田魁新報 |  山形新聞 |  岩手日報 |  福島民報 |  福島民友新聞 |  産業経済新聞  |  日本経済新聞 |  ジャパンタイムズ |  下野新聞 |  茨城新聞 |  上毛新聞 |  千葉日報 |  神奈川新聞 |  埼玉新聞 |  山梨日日新聞 |  信濃毎日新聞 |  新潟日報  |  中日新聞 |  中部経済新聞 |  伊勢新聞 |  静岡新聞 |  岐阜新聞 |  北日本新聞 |  北國新聞 |  福井新聞 |  京都新聞 |  神戸新聞 |  奈良新聞  |  紀伊民報 |  山陽新聞 |  中国新聞 |  日本海新聞 |  山口新聞 |  山陰中央新報 |  四国新聞 |  愛媛新聞 |  徳島新聞 |  高知新聞 |  西日本新聞 |  大分合同新聞  |  宮崎日日新聞 |  長崎新聞 |  佐賀新聞 |  熊本日日新聞 |  南日本新聞 |  沖縄タイムス |  琉球新報 |  共同通信