社説

2009年04月23日

導入へ不安解消策は万全か

 一般市民が殺人や強盗などの重大な刑事裁判に裁判員として参加し、裁判官とともに被告人を裁く裁判員制度(5月21日施行)の開始まで1カ月を切った。

 国民の司法参加の機会を増やし、理解を深めるとともに刑事裁判の審理や判決に市民感覚が反映されることが期待されている。

 しかし、法律の素人が被告人の人生を左右する重い判断に立ち会う制度だけに、不安や抵抗感を抱く人はいまだに少なくない。

 対象となる裁判員へのメンタル面のサポートをはじめ、分かりやすい司法手続き、捜査の透明性確保など果たして万全の態勢は整ったのだろうか。

■県内は年30件程度か■

 同制度がスタートすると、本県では宮崎地裁で実施される。

 過去の事件発生状況などから同地裁の算定によると、本県では年間30件程度になりそうだ。

 ただ、同制度に関しては導入検討時から違憲論も根強い。

 背景には明治憲法下での「裁判官の裁判を受ける権利を侵害する」という陪審法違憲論を引きずる形で「現在の憲法が想定しているのはプロの裁判官による裁判だ」との主張がある。

 こうした違憲論に対しては例えば、現在最高裁判所の裁判官には法曹界以外からの登用があるほか、下級裁判所についても裁判官のみで構成することを定めた規定は存在せず、これらが同制度の合憲性の根拠にもなっている。

 だが、現実に最も重い量刑では死刑もあり得る裁判に臨むことに、一般市民の多くが戸惑いや不安を感じていることは確かだ。

 裁判員裁判では警察や検察、弁護側から裁判所まで関係者すべてが事件に関して分かりやすく、説得力ある真相解明に取り組むのはもちろんで、さらに裁判員への最大限の配慮が求められる。

■細かな検証作業必要■

 和歌山の毒物カレー事件。最高裁の死刑判決は裁判員制度に一抹の不安を抱く一例となった。

 最高裁は1、2審での被告の反論をことごとく退け、上告を棄却した。しかし、事件と被告を結びつける自白や直接証拠はなく、検察側が科学的鑑定や状況証拠を積み上げた結果、最高裁は「疑いを挟む余地がない程度に立証された」と判断した。

 事件の真相が見えにくかったことは否めず、一般市民がこのような事件と向き合ったときに自信を持って判断できるだろうか。

 また、裁判は長期化したが、同制度では審理の迅速化によって裁判員の負担を軽減するという。しかし、今回のように事件の中身によっては長期化は避けられず、迅速化のために審理を犠牲にするようでは本末転倒である。

 裁判員裁判では適正な捜査による証拠に基づき判断することも担保されるべきだが、取り調べの可視化導入議論も進んでいない。

 制度導入後もまだ細かな検証作業を続けていく必要がある。


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