これ以上の停滞は許されぬ
日本の原子力が暗礁に乗り上げている。先月の閣議に報告された2008年版原子力白書と07・08年版原子力安全白書。それぞれのページから山積する課題と技術的難問が読み取れる。
このままでは原子力絡みの基本的政策の信用度は下がるばかりだろう。残念ながら、2つの白書を報告した原子力委員会と原子力安全委員会は現状と課題を淡々とつらねているだけで、困難をどう克服するかというメッセージが伝わってこない。
温暖化対策に不可欠
日本の原子力の問題点をまとめると次の4点になる。
(1)原子力発電所稼働率の低迷。
(2)耐震安全性の確認。
(3)建設中の再処理工場(青森県六ケ所村)完成遅れ。
(4)高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)運転再開遅れ。
日本は08年度から京都議定書で温室効果ガスの1990年度比6%削減を義務づけられる5年の約束期間に入った。二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない原発は当面の温暖化対策にとっては欠かせないものになっている。
だが、日本の原発稼働率は2007年度で60・7%まで低下している。その影響をまともに受けたのが同年度の温室効果ガス排出量(速報値)だ。1990年度比で8・7%増と過去最高となった。
米国やフランス、ロシアなどはこの10年、原発稼働率が上がっているのに、日本だけが例外的に大きく低下した。
核燃料サイクル路線
稼働率が低迷した要因は、07年7月の新潟県中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発の全7基が停止したためだ。被害が比較的軽かった7号機は修理、点検、耐震補強が終わっている。運転再開に向けて地元の了解を待つ段階にこぎ着けた。
世界の原発史上、本格的な地震被害から復旧する初めてのケースとなる。運転再開にゴーサインが出れば、ゆっくりと出力を上げながら安全性を慎重に確かめることになる。7号機がうまくいけば残る六基が復旧するめどが立つ。
六ケ所再処理工場と「もんじゅ」は、08年には運転している予定だった。どちらも、核燃料サイクル路線を選択した日本の原子力政策の要となる施設で建設費は計3兆円に上る。
まずは、調査によって原発周辺の断層を見逃さず、余裕のある耐震性を確保することが大切だ。そして、「もんじゅ」など巨費を投じた施設の停滞を招いた技術開発に対する甘さ、組織的管理の怠慢を排除しなければならない。 急がば回れとはいえ、これ以上の停滞は許されない。
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